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3歳の男の子がおりました。
ある良く晴れた日曜日、
家族で「ドリームランド」へ出かける事になりました。
一日遊園地で楽しく遊び、夕闇が迫って来た頃、
1歳の弟は、疲れてバギー(乳母車)の中で眠ってしまいました。
「もう帰ろう。」と言う父親に、弟のことを頼み、
母親は3歳の男の子の手を引いて、
遊園地の外周を走っている汽車に乗せてくれました。
陽が落ちて、すっかり夕闇に包まれた遊園地は、
電飾が灯り、光に満ちた別世界のようです。
車窓の外のきらめき輝く遊園地は、
3歳の男の子の心を、きらめく光で一杯に満たしました。
「夢の国にいるみたいや〜。」
「ドリームランド」という言葉の意味も知らない男の子は、
ここが現実なのか夢の中なのかも分からなくなる程、
その美しさに見とれました。
汽車は元の駅へ戻り、男の子と母親は、父と弟の待つ場所へ急ぎました。
途中にある噴水にも、カクテルライトが灯り、
言葉では言い表せられない美しさです。
その噴水の前で、まっ白い制服に身を包んだ、
たくさんの男達が楽器を持って座っています。
多分、どこかの音楽隊が演奏していて、
男の子が通りかかったときには、
曲と曲の間だったのでしょうが、
男の子には、その人たちが「何」なのか分かりませんでした。
急に演奏が始まりました。
演奏曲は、
男の子の大のお気に入りTVアニメ「鉄腕アトム」の主題歌です。
男の子は、小走りにしていた足をピタッと止めて、
その瞳をキラキラ輝かせ、その演奏に聴き入ってしまいました。
男の子の心を察知したのでしょう、急いでいたにもかかわらず、
母親は、何も言わず手をつないだまま男の子の横に佇み、
男の子の様子を見ていました。
閉園時間が迫っているので、周りの人たちは慌ただしく、
立ち止まって演奏を聴く人は、誰一人いません。
音楽隊は、あたかも、
一組の親子のためだけに演奏しているかのようです。
男の子は、
「夢の国に来れば、夢の演奏家達の音楽が聴けるんだ。」と思いました。
もう既に、何曲か演奏したあとだったのでしょう。
白い服の男達が一斉に立ち上がり、
その様子に男の子は少し驚きビクッとしました。
白い服の男達がお辞儀をしました。
この曲が最後の曲で、演奏の終了を意味していました。
母親はやさしく「行こうか?」と男の子に声を掛けました。
男の子もコックリうなずき歩き出しました。
白い服を着た一番前の男の人が、ニコッと男の子に微笑みかけました。
男の子も、ちっちゃな手で、小さくバイバイしました。
男の子は、何度も何度も噴水の方を振り返りながら、
父親と弟の待つ場所へ向かいました。
この7年後妹が生まれ、その4年後父親は病で息をひきとりました。
母親は3人の子供達を一人で育てました。
3歳だった男の子は、成長して音楽が好きになりました。
弟は歴史が、妹は絵が得意に育ちました。
大人に成長した男の子は、
期せずして「消防音楽隊」の指揮者になりました。
男の子は、大人に成長してからも、
「3歳の心」をごまかす事も、
「3歳の眼差し」から逃れる事も出来ませんでした。
誰かに聴いてもらうための演奏であれば、
たとえ誰も聴いていなくても、
どんなに無様な演奏でも、
出来る限りの事を、精一杯しました。
そして、幸運にも
「がんばれ、消防音楽隊!」と言う記事を、
公式HPで毎月連載する機会にも恵まれました。
幾度もの危機を乗り越え、
皆様のお陰で、
平成11年8月から12年間連載を続ける事が出来ました。
「がんばれ、消防音楽隊!」は、
皆様に可愛がって頂き、とても幸せでした。
140話まで書いてきましたが、
10年以上前に書いた「最終回」を掲載し、
これで筆を置く事にしました。
私自身、とてもさびしく思っています。
今まで、お付き合い頂き、誠にありがとうございます。
失笑にさらされ、蔑まれ、バカにされながら、
しかし多くの人に支えて頂き、
ポンコツ音楽隊でも、
今年度で発足25年になりました。
その間、数え切れないくらい、
辛くて、イヤな思いもしましたが、
今も心に残る、数々の出会いや別れ、
そして素晴らしい一生の思い出を沢山頂きました。
お世話になった方々に、心からお礼申し上げます。
手前みそですが、音楽隊員達も、共に頑張ってくれました。
未経験で、興味もない、むしろキライな「音楽」に、
逃げずに取り組む彼らの頑張りがなければ、
音楽隊は今まで継続出来ませんでした。
感謝しております。
来年以降も、継続して消防出初式に出演し、
そして、演奏機会も増やしたいと思っております。
私は、平成23年5月に消防本部消防長に就任致しました。
今後も可能な限り音楽隊に携わっていくつもりです。
「がんばれ、消防音楽隊!」の連載は、これで終わりますが、
引き続き消防音楽隊へご支援をお願い申し上げます。
皆さん、今日までありがとう。

ただただ感謝の気持ちで胸がいっぱいです。
長い間、ありがとうございました。
そして、これからも
がんばれ、がんばれ、消防音楽隊!
柏原羽曳野藤井寺消防組合消防本部

消 防 長 河 井 賀 文
Kashiwara Habikino Fujiidera Fire District
Chief Offcer
Senior Superintendent YOSHIFUMI KAWAI
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